デモンストレーター:[RYO (齋藤 亮)] |
この[SuperNATURAL]を大別すると、「アコースティック・トーン」と「シンセ・トーン」のふたつがある。「アコースティック・トーン」では、ピアノやエレピ、オルガンといった鍵盤楽器、ギターやヴァイオリンを筆頭とする弦楽器、トランペットやオーボエなどの管楽器、そして二胡やシタールなどの民族楽器と、文字通りアコースティック系楽器の音色が包括されている。 これらのサウンドをただモデリングしているだけでなく、プレイヤーの演奏フレーズ、和音とメロディといった演奏の違いなどを、それぞれのトーンに最適な専用音源が自動解析してくれるという。さらにピッチ・ベンドやモジュレーション・レバー、アサイナブル・ボタン([S1][S2])の操作で、アコースティック楽器特有の表現力豊かな演奏を自由に再現することが可能となっている。要は、従来までのマルチ・サンプルやベロシティー・スイッチによるによる段階的な発音方法とはまったく異なり、楽器が奏でる音色と音量の時間的な変化を無段階的にモデリングし、それをリアルタイムに生成するというテクノロジーが[SuperNATURAL]なのである。 |
続いて[SuperNATURAL]の「シンセ・トーン」だが、ビンテージ・アナログ・シンセサイザーからデジタル・シンセサイザーまでを網羅。例えばアナログ・シンセであれば、オシレーターやフィルターの振る舞いを解析し、その個性的なサウンドを再現してくれ、しかもひとつのシンセ・トーンにはOSC、FILTER、AMP、LFOを3系統搭載し、強烈なシンセサイジングを1トーンで実現してくれるという。これに加えて、リング・モジュレーションや複雑な倍音を作り出すWAVEシェイプ、UNISONモードも用意。オシレーターにはビンテージ・シンセをイメージしたアナログ波形に加え、近~現代の音楽で聴かれるきらびやかなPCM波形も350種類以上収録。画面いっぱいに広がるグラフィックで、あらゆるシンセ・サウンドを直感的に生成可能だ。 [JUPITER-80]では、[SuperNATURAL]トーンを最大4個重ねたものを「ライブ・セット」とし、荘厳で表現力豊かなサウンドによるパフォーマンスを実現。さらに「ライブ・セット」は、アッパーとロワーでスプリット、レイヤーすることが可能で、従来のPCMシンセサイザー1台では難しかった分厚いスタック・サウンドを簡単に作り上げることが可能だ。この「ライブ・セット」には4つのトーンのそれぞれのレベル、パン、カットオフ、MFXセンドなど複数のパラメーターを一括して制御可能な新機能「トーン・ブレンダー」が搭載されている。 加えて音作りに欠かせないエフェクトも充実しているところも見逃せない。アッパー・パートとロワー・パートにアサインする「ライブ・セット」には、定番サウンドから強力な音作りまで対応する76 タイプのマルチ・エフェクト(MFX)を4系統並列に搭載。さらにここにリバーブを1系統も加わる。アッパー・パートとロワー・パートを同時使用すれば、最大で8系統のエフェクトと2系統のリバーブを使用したパワフルなサウンドを生み出すことが可能だ。 外観においては、名機[JUPITER-8]を彷彿させる、カラフルに色分けされたパネル・レイアウトが目を引くが、色とりどりのスイッチ・ボタンやスライダーが視認性に優れているため、サウンドの状態を瞬時に把握することが可能で、ライブ・パフォーマンス時の直感操作を実現している。加えてフルカラー・タッチ・スクリーンによる大型ディスプレイも備わり、ライブにおいての使いやすさは抜群だ。肝心の鍵盤部は、ステージでも確かな演奏感を味わえるおもり付き鍵盤を採用した76鍵盤仕様。堅牢なボディと相まって、繊細な表現まで余すことなく再現することができる。 |
【Brief History-Roland Jupiter】
単音弾きしかできないモノフォニック・シンセが主流で、和音弾きができるポリフォニック・シンセは[Poly Moog]を筆頭に海外製の高級機種しかなく、それらの発売価格が当時100万円を超えていたため、素人がとても買えるような代物ではなかった頃に、ローランド[JUPITER-4]が誕生。その開発は1976年頃から行なわれていたようで、その努力が結実し製品化されたのが1978年。本機の売りは4音ポリフォニックを実現したことと、音色をプリセットできるところであったが、これらの機能はちょうど同年に発売されたシーケンシャル・プロフェット社の[Prophet 5]にも備わっており(プロフェット5は5音ポリ/40ユーザー・プリセット)、両モデルは価格こそ開きがあったものの、いいライバル関係にあったと言えよう。また1978年と言えば、シンセサイザー普及の立役者であるY.M.O.(イエロー・マジック・オーケストラ)のデビュー・イヤーでもあり、[JUPITER-4]は坂本龍一と矢野顕子らが使用していたことでも知られる。 1970年代はポリフォニック・シンセがまだ珍しい存在で種から芽が出たばかりの状況であったが、1980年代になると、その芽が一気に成長し実を付け始めることになる。ローランドの場合、[JUPITER-4]から3年を経て1981年にリリースされた[JUPITER-8]が本格的ポリ・シンセの原点となったモデルと言うことができる。16VCOの8音ポリフォニックという、当時としては夢のようなスペックを備え、その音の良さからアナログ・シンセの頂点を極めたという賛辞が送られ、当時のライバル商品であった[Prophet 5]と人気面で肉薄。本機の発売当時の価格が98万円であったことも手伝い、ローランドのシンセ・ラインナップの中で「JUPITER」=フラッグシップという図式がここに完成した。[JUPITER-8]は前述のY.M.O.(坂本龍一と細野晴臣)やハワード・ジョーンズを筆頭とする有名海外ミュージシャンらの使用により、高額モデルであったにも関わらず人気を博し、今なお評価は非常に高い。 1982年には[JUPITER]シリーズの弟分として[JUNO 6]をリリース。10万円代のポリ・シンセということもあり、アマチュア・ユーザー層を中心に大いに持て囃された。そして翌83年には、ローランドとして初めてMIDIに対応したシンセサイザー[JUPITER-6]が発売となるが、本機を最後にしばらくの間、ジュピター・シリーズは姿を消すことになる。 |
[Specifications] ■鍵盤部:76鍵(ベロシティー対応、チャンネル・アフタータッチ付) ■音源部 ■USB メモリー・ソング・プレーヤー/レコーダー部 ■その他
●アルペジオ:プリセット=128 スタイル、ユーザー=128 スタイル |