POWER ICは一般的にエフェクターの心臓部であるオペアンプの増幅と異なり、小型音響機器にてスピーカーを直接駆動する為などに利用されます。これをギターアンプのパワーアンプセクション、その前段に配置したFETやトランジスタをプリアンプセクションと見立てて、前段からの大きな入力によって後段で歪ませる今までの手法はエフェクターデザインにて採用された回数は非常に少ないものの、特にギターのボリュームに対してのナチュラルかつリニアな反応性は他のデザインとは一線を画すものでした。
しかしながら、前段のトランジスタやFETで歪み成分のサウンドの多くが形成されてしまうことか、今までのデザインでは、"POWER ICに過大入力を入れて歪ませた本来のサウンド”とは異なっていたのも事実です。故に"Roger"では、今までにモノラルタイプのPOWER ICしか使用されてこなかったこのデザインに対して、ステレオタイプのPOWER IC "NJM2073"を初めて採用しそれをステレオとして解釈するのではなく、直列に配列し前段、後段ともPOWER ICのみで構築した純粋なPOWER IC 2段構造を実現しました。
この3つでしたが、まず1については現行で存在するTS系のそれよりも双方ともさらに強化してあります。これによって、他の項目とあわせて、Clean Boost~Low Gain Overdrive~Hi Gain Overdriveまで幅広い使用用途においてお楽しみいただけるようになりました。2の項目について、これはMATのキャラクターの確立という点も考慮しながら、他のTS系よりもかなり強いローエンドにしてあります。Low~Low Midまでしっかりした太い芯が存在することより所謂TSの代名詞である、“Midrangey”なサウンドキャラクターでは対応できなかったシチュエーションに対応できるようになりました。
ハイエンド系のモディファイTSには必ずと言っていいほど搭載される高速オペアンプOPA2134を同じように採用していましたが、最大時のゲインレンジをそれらよりもさらに上げたMATでは極めて不安定な状態になることから、よりハイエンドなAnalog Devices社の高速オペアンプAD712を採用することで解消しました。 その過程でとても嬉しいことに、さらなる解像度の向上、また歪の質感がOPA2134(+ Sym LED Clip)タイプのものよりも柔らかくなり、弾力的な独自の質感とともに、MAT自体の個性が強化されました。