小出力でありながら高音質を売りにしたスモール・ギター・アンプが近年、ちょっとしたブームとなっている。自宅で弾く練習用アンプとしての用途の他、レコーディングなどで使うのに音量/サイズともに最適。またプリ部/パワー部ともに真空管を用いたオール・チューブ仕様や、モデリングなどデジタルによる最新技術を駆使した仕様など、大型機種と遜色ないスペックを持ったものが増えており、アンプ・メーカー各社が競って本格派のスモール・アンプを市場に送り出している。いまや“小型アンプ=初心者用”というイメージはすっかり払拭されつつあるようで、中級~上級者にとっても魅力的な製品が多く存在する。そうした中で、イシバシ楽器が自信を持ってレコメンドしたいアンプがコレだ!
先導するのがブルース・キアー(テクニカル・ディレクター)とイアン・ロビンソン(R&Dマネージャー)の両名で、その他スタッフを含め、もともとマーシャル社で働いていたというキャリアを持つ人材たちによって、2004年に創業。 |
Blackstar HT-1R Combo、HT-5 Comboをミサワマサヒロ氏が徹底チェック! 動画のラストにはこの二つの新しいアンプでレコーディングした書き下ろし楽曲もプレイします。 デモンストレーター・プロフィール |
今回紹介する両機種において、肝となるスペックがISF(Infinite Shape Feature)コントロール。このツマミを左回転に絞り切った時にUSAサウンドになり、右回転側へ振り切るとUKサウンドになるという画期的なもので、この技術は現在ブラックスター社では特許を出願中だという。 ここで言うUSAサウンドは、フェンダー・アンプに代表される6L6パワー管+オープン・キャビネットを指しており、音色としては中高域の抜けに優れた特性を持つ。一方のUKサウンドはマーシャル・アンプを筆頭とするEL34パワー管+クローズド・キャビネットをモチーフにしており、締まった低域が持ち味となっている。 ISFコントロールが優れているポイントは、ツマミ操作によるポット・コントローラーを採用しているところ。これによりUSAサウンドとUKサウンドの二者択一に留まらず、両者の持ち味の比率配分を微妙なところまで設定可能だ。これが実に使い勝手がいい! 今回アンプの試奏をしてくれたミサワマサヒロ氏によれば、USA側に振り切ると明るめで低域がタイトな方向となり、UK側にすると低域が強調され箱鳴り感が得られるとのこと。動画内最後のデモ演奏曲を弾いた際のISFコントロールのセッティングは11~12時くらい。リア・ピックアップで弾いているわりには低音弦の鳴りが太く、高音弦におけるストラトならではの突き刺さる感じもきっちりと出力しており、実に心地よいサウンドを鳴り響かせていた。 |
1~10W程度の出力を持つ小型オール・チューブ・アンプの場合、真空管をシングル構成にした回路が主流となっているが、ブラックスターはプッシュ・プル回路へのこだわりを見せている。同社オフィシャルHP内のブルース・キアー氏のインタビュー記事によれば、「パワー管にEL84を1本だけ使用した回路の場合、強くドライヴさせた時に音がやや荒々しくなる傾向がある。クリーンもしくはブルースを弾くのにはいいけど、クランチくらいまで歪ませるとあまり気持ち良い音にならないんだ。それで私たちはHT-5 Comboにおいて、12BH7という双三極管を1本だけ用いたプッシュ・プル回路をデザインし、その結果ブリティッシュ・ロック特有のクランチ・サウンドをわずか5Wという出力ながら作ることに成功した。低出力のプッシュ・プル回路を持つアンプは、当時誰も作っていなかったので、私たちがやることにしたんだ」。ちなみに、出力1WのHT-1R Comboにおいてもプッシュ・プル回路は採用されている。 試奏を通じて驚いたのが、オール・チューブによる小型アンプでありながら、これだけしっかり歪むこと。ミサワマサヒロ氏が試奏で使ったストラトはノーマル・タイプのシングルコイル・ピックアップを搭載していたのだが、デモ動画を見ておわかりのとおり、かなり深く歪んでいる。しかもペダルで作った作為的な歪みとは一線を画すような滑らかさを併せ持ち、チューブ・アンプをドライブさせたリアリティのあるオーバードライブ・サウンドを出力していた。 |